Q&A  ドライブチェーン

お客様から寄せられました「よくある質問」をQ&A形式で掲載しています。質問をクリックして回答へお進みください。

Q&A内で語句

ドライブチェーン

Q1 ステンレスドライブチェーンの品揃えと特長は?
Q2 コーティングドライブチェーンのNP仕様、NEP仕様の違い、使分けは?
Q3 ラムダチェーンとはどの様なチェーンか?
Q4 多列のラムダチェーンの製作対応は?
Q5 ラムダチェーンに給油しても良いのか?
Q6 低温で使用できるチェーンは?
Q7 継手リンクのクリップ、割ピンの取付け方向は?
Q8 チェーンにはどのような潤滑油を使用すれば良いのか?
Q9 駆動用ローラチェーンの潤滑にグリースは効果があるか?
Q10 チェーンの摩耗寿命限界とは?
Q11 チェーンの初期伸びはどれぐらいか?
Q12 どの様な場合にチェーンテンショナーを使用しなければならないのか?
Q13 チェーンの騒音の対策は?
Q14 ステンレスチェーンの最大許容張力はなぜ低いのか?
Q15 スプロケットの回転ムラの原因と対策は?
Q16 ピンギヤ駆動とはどの様な方法か?
Q17 ローラチェーン、ラムダチェーンの弾性伸び量は?
Q18 多連ロール(ローラコンベヤ)の駆動方式とその特長は?
Q19 チェーンにはどの様な規格があるのか?
Q20 チェーンはRoHS指令に対応しているか?
Q21 オフセットリンク(OL)の種類と注文方法は?
Q22 継手リンク(JL,OL,2POL)を組込む際に給油は必要か?
Q23 ローラチェーン(ドライブチェーン)は、過去に呼称名が変更されたことがあるか?
Q24 F形継手リンクとM形継手リンクの違いは?

チェーン周辺機器

Q25 チェーンテンショナ(椿本製)の使用上の注意は?
Q26 チェーンテンショナの変位量と押し付け力の関係は?
Q27 ローラチェーン用自動給油器(SFM68)を上向きで使用できるか?
Q28 ローラチェーン用自動給油器(SFM68)に充填された食品機械用油とは?
Q29 ローラチェーン用自動給油器(SFM68)でON、OFF操作が頻繁に出来るか?
Q30 チェーンの摩耗伸びを簡単に測定できないか?
Q31 エンドボルトの特型は対応できるのか?
Q32 チェーン分解用の簡単な治具はあるか?
Q33 エンドボルトへの荷重の方向は?
Q34 スプロケットの心出し方法は?
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Q1 ステンレスドライブチェーンの品揃えと特長は?
A1

ステンレス材は、一般的に耐食性、耐薬品性、耐熱性に優れた材料です。椿本チエインでは、このステンレス材の利点を生かした下記の様な品種を品揃えしており、食品機械業界を中心に様々な業界、用途でご採用頂いています。

仕様 SS仕様 HS仕様 NS仕様
材質

・18-8ステンレス
※クリップは17-7ステンレス

・ピン、ブシュ、ローラ:
13Crステンレス

・プレート:
18-8ステンレス

・クリップ:
17-7ステンレス

・18-12ステンレス
※クリップは17-7ステンレス

特長

・スチール製、めっきチェーンに比べ水中、酸性、アルカリ性等の雰囲気での耐食性あり

・低温、高温領域(-20℃~400℃)で使用可能

・SS仕様より長寿命

・最大許容張力:
SS仕様の1.8倍

・耐食性:
SS仕様より劣る

・-20℃~150℃で使用可能

・SS仕様よりさらに優れた耐食性

・非磁性(クリップは除く)

※その他、内リンクにプラスチック材を、外リンクにステンレス材を使用した、無給油、軽量、低騒音の特長を兼ね備えたプラコンビチェーンも用意しております。

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Q2 コーティングドライブチェーンのNP仕様、NEP仕様の違い、使分けは?
A2

ステンレスドライブチェーンは、スチールチェーンに比べ耐食性は優れますが、強度(最大許容張力)は1/8以下と低くなります。強度がスチールチェーン並みで、耐食性に優れたものを必要とされる用途では、コーティングドライブチェーンのNP仕様、NEP仕様を使用頂いています。(但し、ステンレスドライブチェーンのような耐食性はありません)
以下に夫々の特長を記します。

  スチール NP NEP
外観色 ダークグレー ライトシルバー ライトグレー
(ローラはダークグレー)
強度比 100 85 100
耐食性 悪い良い
長所 汎用的で廉価 外観美あり
軽度の耐食性あり
耐食性に優れ、ノンクロムで環境に配慮(RoHSに対応)
短所 耐食性を望まれる用途には不適 スチールに比べ強度がダウンする 対応品種に限定あり
主な用途 一般伝動、吊下げ用 外観を重視される事務機や専用機 屋外でのご使用や港湾関連など

※強度比は、スチールを100とした概略値。

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Q3 ラムダチェーンとはどの様なチェーンか?
A3

チェーンの摩耗伸びを抑え、延命を図るには潤滑が必要不可欠です。
しかし、以下の理由により、給油されずに使用される場合も多いようです。


1. 油飛散によるワークの汚れを嫌われる場合
2. クリーンな作業環境を維持するため
3. 場所的に給油が困難あるいは不可能な場合(たとえば高所など)
4. 給油、メンテナンスにコストがかかる
5. 給油に手間がかかる


これらの問題を解決するのが、給油しなくても比較的長い寿命で使用できるラムダチェーン(無給油チェーン)です。ラムダチェーンの構造は、左図の如くブシュに焼結含油軸受を使用しています。多孔質の焼結ブシュの空孔(ポーラス)の中に油を含浸させて潤滑を得ることで、無給油で使用が可能です。ラムダチェーンは1988年に発売以来、多くの産業分野で採用され、「メンテナンス工数の低減」「作業環境の改善」「生産性アップ」に貢献しています。

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Q4 多列のラムダチェーンの製作対応は?
A4

ラムダチェーンの発売当初は、1列のみを商品化しておりました。その後、2列についても多数のご要望を頂き、2001年 カタログに記載し商品化しました。但し、RSローラチェーンと寸法や伝動能力、最大許容張力が異なりますのでご注意ください。

<2列チェーンの比較>
  多列係数
1列の伝動能力、最大許容張力に乗じる係数
スプロケット 寸法比較
RSローラチェーン 1.7 RSローラチェーン2列用
ラムダチェーン(LMD) 1.4 特型になります
(2列横ピッチが異なる)
内プレート板厚、チェーン外幅寸法が異なる
ラムダチェーン
RS互換仕様(LMDS)
1.7 RSローラチェーン2列用 中間プレートを変更することにより、RSローラチェーン2列用スプロケット使用可
ラムダ強力チェーン(LMDH) 1.7 特型になります
(2列横ピッチが異なる)
LMD2列に対し外及び中間プレート板厚を1サイズアップ
ラムダアタッチメント付RS形チェーン(LMC) 1.7 RSローラチェーン2列用 RSローラチェーンと外観寸法は同じ

※3列以上は性能上の問題から、ラムダチェーンでは製作できません。

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Q5 ラムダチェーンに給油しても良いのか?
A5

一般的にラムダチェーンは、給油したくない あるいは 給油できないアプリケーションに最適です。定期的な給油が可能であればRSローラチェーンの方が長寿命を期待できますので、RSローラチェーンをお奨めいたします。(ラムダチェーンでも適正な給油を行なうことで、下図の通り、更に延命が図れます。)

<給油の要領>

・給油サイクル

元々、ブシュに含油しているため、RSローラチェーン等に比べ、初回の給油の間隔は長くとれます。(但し、2回目以降の給油サイクルはRSローラチェーン等と同じです)効果的な給油の時期は、上図で伸びが急激に立ち上がる前(A点)になり、伸びが立ち上がってからでは給油してもさほど延命は図れません。プレート間から茶色い摩耗粉が発生すると、既にブシュの油切れの状態です。使用条件等により異なりますが、目安として1~3日に一度は給油を実施ください。

・油種

鉱油や合成油であれば問題ありません。極圧型の作動油やギヤー油をお勧めします。

・粘度

使用条件により異なりますが、一般的な目安は ISO VG68~220程度になります。


<新商品のご紹介>

ラムダチェーンに比べ、更に寿命を延命した長寿命ラムダチェーンを商品化しております。

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Q6 低温で使用できるチェーンは?
A6

冷凍庫内など、チェーンを低温で使用される場合、
1. 低温脆性による衝撃強度の低下
2. 潤滑油の凝固
3. 霜や氷の付着による屈曲不良
という問題を生じます。
当社では、汎用ドライブチェーン及びラムダチェーン標準仕様から材質、熱処理を変えた、低温で使用できる耐寒チェーンとラムダチェーン耐寒仕様を商品化しています。
耐寒チェーンは、ご使用前に耐寒オイルや耐寒グリスをチェーン内部に満たし、定期的に給油して使用ください。
ラムダチェーン耐寒仕様は、特殊含油ブシュの採用により無給油で使用できます。
汎用ドライブチェーンおよび耐寒チェーンの低温での最大許容張力の目安は以下の通りです。

  汎用ドライブチェーン
(RS80以上の場合)
耐寒チェーン
-10℃~ 60℃ カタログ値 カタログ値
-20℃~-10℃ カタログ値×1/2 カタログ値
-30℃~-20℃ カタログ値×1/3 カタログ値
-40℃~-30℃ カタログ値×1/4 カタログ値
-50℃~-40℃ 使用不可 カタログ値×2/3
-60℃~-50℃ カタログ値×1/2
-60℃以下 使用不可
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Q7 継手リンクのクリップ、割ピンの取付け方向は?
A7



RS60以下の小形ローラチェーンの継手リンクにはクリップを採用しています。左図の如く、進行方向に対し、頭側を前側にして取付けてください。取付けの際には、クリップの脚を開けすぎない様に注意ください。



RS80~RS200及び3列以上の小形ローラチェーンでは、継手リンクに割ピンを採用しています。左図の如く、外側から割ピンを挿入し、60°程度開脚ください。割ピンの再使用や市販の割ピンは使用しないでください。

※チェーン品種により継手リンクの取付け方法が異なります。詳しくはカタログを参照ください。

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Q8 チェーンにはどのような潤滑油を使用すれば良いのか?
A8

ローラチェーン伝動において、潤滑は非常に重要です。
潤滑が不完全では、極めて短時間で寿命に至る場合があり、思わぬ事故につながる場合があります。潤滑については特にご注意ください。
以下に推奨いたします潤滑油の番号を記します。

SAE番号
潤滑形式 AI・AII・B C
-10℃~0℃ 0℃~40℃ 40℃~50℃ 50℃~60℃ -10℃~0℃ 0℃~40℃ 40℃~50℃ 50℃~60℃
RS50以下の小ピッチのもの SAE10W SAE20 SAE30 SAE40 SAE10W SAE20 SAE30 SAE40
RS60・80 SAE20 SAE30 SAE40 SAE50
RS100 SAE20 SAE30 SAE40 SAE50
RS120以上の大ピッチのもの SAE30 SAE40 SAE50
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Q9 駆動用ローラチェーンの潤滑にグリースは効果があるか?
A9

チェーンの摩耗は、ピンとブシュ間(ピッチ伸びになります)、ブシュとローラ間、外プレートと内プレート間、及びスプロケットとローラ間で発生します。
スプロケットとローラ間以外の隙間は僅かであるため、粘度の高いグリースでは必要な箇所に浸透せず、潤滑効果が殆ど発揮されません。
チェーンには、ISOVG32~220(使用温度やチェーンサイズにより異なります)程度のオイルをご使用ください。
(油種については、「Q8.チェーンにはどのような潤滑油を使用すれば良いのか?」を参照ください)
尚、給油は必要な箇所に行き渡る様、チェーンのたるみ側で、外プレートと内プレートの隙間、及びブシュとローラ間に行なってください。
吊下げ用でチェーンを使用される場合、スプロケット等で屈曲しない部分で、防錆を目的とされる場合は、グリースを使用されても問題はありません。

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Q10 チェーンの摩耗寿命限界とは?
A10

(1)RSローラチェーンの場合

チェーンがスプロケット上で屈曲する際、ピンとブシュが摺動し、少しずつピン外周とブシュ内周の摩耗が進行します。 これがチェーンの摩耗伸びとなります。チェーンの摩耗伸びが進行すると、チェーンがスプロケット歯の山に登っていくようになり、ついには歯飛びを起こし、噛合い不能になります。

【歯飛びを起こす限界チェーン伸び率】
歯飛びを起こす限界チェーン伸び率は、スプロケット歯数に応じて異なります。 歯数が小さくなると、計算上、限界伸び率は大きくなりますが、実用上振動が大きくなったり強度低下するなど弊害が多いため、歯数60枚以下では限界を1.5%としています。

 
大スプロケット歯数 チェーンの使用限界(伸び率)
60枚以下 1.5%
61~80以下 1.2%
81~100以下 1.0%
101~110 0.8%

(2)ラムダチェーンの場合

ラムダチェーン及び長寿命ラムダチェーンは、0.5%位が寿命の目安となります。RSローラチェーンとは異なり、無給油で使用されるため、含油焼結ブシュの油切れが発生した時点が取替え時期となります。この油切れが発生する時期が 伸び量でいうと0.5%位となります。油切れになると、プレート間に赤い摩耗粉が付き、屈曲不良も発生しだしますので、これを目安に取替えてください。

【摩耗伸び率の算出方法】
チェーン伸び率=(判定寸法 - 基準長さ)/基準長さ × 100(%)
基準長さ=チェーンピッチ × リンク数


 
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Q11 チェーンの初期伸びはどれぐらいか?
A11

チェーンは運転開始後、組立歪と初期なじみにより伸びが急激に立ち上がります。これを初期伸びといい、その後、伸びは緩やかに進行します。初期伸び量は、通常0.1%程度ですが、当社のスチール製ローラチェーンのほとんどは、部品精度の向上、組立後のプレロードにより、初期伸び量を0.05%以下に押さえています。

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Q12 どの様な場合にチェーンテンショナーを使用しなければならないのか?
A12

(1)主な使用ケース

チェーンの過剰な弛み(タルミ)は、チェーンの振動、騒音を発生させ、チェーン及びスプロケット双方の寿命を低下させたり、歯飛びが生じたり、場合によっては思わぬトラブルに進展する場合があります。それを回避する為に テンショナが用いられます。テンショナは、張り過ぎに注意し、適度に張り調整することでチェーンの持っている伝動機能を長時間持続させる事ができます。

使用ケース 主 な 使 用 目 的
弛み調整 振動防止 張り調整 巻付け角増加
1.中心距離が調整できない時
2.中心距離が短く上側が弛みの時
3.両軸配置が垂直かそれに近い時
4.多軸伝動で全長が長い時
5.正逆転ドライブの時
6.振動が激しい時
7.中心距離が長い時 ※1
※ 1:軸間距離がチェーンピッチの50倍以上の時。また、脈動荷重がかかる場合はチェーン ピッチの20倍以上の時。

(2)使用上の注意

1. 一般的には、テンショナはチェーンの弛み側に配置ください。正逆運転が頻繁にある場合は、両側に配置が必要です。この場合テンショナに過負荷が作用しますのでご注意ください。当社のチェーンテンショナをご使用頂く場合は当社にご相談ください。

2. スパンの中央より、スプロケットの近くに配置した方がわずかの移動で調整量が大きく取れます。一般的には、小スプロケットの近くのチェーンの外側に設置します。そうすることで、小スプロケットへの捲き付け角も確保できます。

3. テンショナで押し付ける際は、互いのチェーン同士が接触しないよう注意ください。特に稼動中は、チェーンの脈動もありますので余裕を持たせて調整ください。

4. テンショナのスプロケットは、3歯以上噛合うようにしてください。

5. 一般的には、テンショナのスプロケット歯数は、小スプロケットと同歯数を推奨します。

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Q13 チェーンの騒音の対策は?
A13

チェーンがスプロケットに噛合う際、かならず騒音を発生します。その発生箇所は、以下の通りです。


<発生箇所>

1. (チェーンの)ローラがスプロケット歯底に衝突する際に発生する衝突音。
2. ローラとブシュ間には隙間があり、ローラが弾性振動し発する騒音。
3. 外リンクと内リンクの衝突音。
4. スプロケットの振動による騒音。
5. 各部隙間にはさまれた流体(一般には空気や潤滑油)の排出音。


<対策>

A.衝突エネルギーを減少させる。

・チェーン速度を落とす。

・スプロケット歯数を大きくする。

・小サイズのチェーンを用い、質量を減少させる。

B.衝突部に緩衝効果を持たせる。

・スプロケット歯底、チェーンの各部の隙間(プレート間、ピン-ブシュ間、ブシュ-ローラ間)に給油する。

・エンプラ製ローラを使用する。 (伝動能力は低下します)

・スプリングローラを使用した、低騒音ドライブチェーンを使用する。RSローラチェーン(プレ給油品)に比べ、6~8dB低騒音化が図れます。(当社実験値比)

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Q14 ステンレスチェーンの最大許容張力はなぜ低いのか?
A14

ステンレスチェーンの最大許容張力は、スチールチェーンに比べ約1/8程度に低下します。これは、許容張力の設定方法が下記の通り異なる為です。


〇RSローラチェーン(スチール製)
RSローラチェーンの最大許容張力は、疲れ限度を基に設定した値となっています。この値以下の荷重であれば、繰返し負荷をかけてもRSローラチェーンの疲れ破壊は起こりません。最大許容張力内であれば、特殊雰囲気でない限り、チェーンは摩耗で寿命に至ります。尚、RSローラチェーンの部品には熱処理を施しています。


〇ステンレスドライブチェーン(SS仕様)
ステンレスドライブチェーン(SS仕様)の最大許容張力は、摩耗性能を基に設定した値となっています。(部品が生材で、RSローラチェーンに比べ硬さが低い為、耐摩耗性が問題になります。)これを越える張力が掛かると、チェーンの摩耗伸びが早期に発生し、ピン~ブシュ間の凝着摩耗による屈曲不良も発生します。


【#60の場合】
チェーン 最大許容張力kN{kgf}
RS60-1 8.83{900}
RS60-SS-1 1.57{160}
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Q15 スプロケットの回転ムラの原因と対策は?
A15

<チェーンの速度変動>

まず、回転ムラの原因のひとつとなるチェーンの速度変動についてご説明します。チェーンはスプロケットに対し、多角形的に噛合います。そのため、下図の通り円の接線位置で噛合う時と、弦の位置で噛合う時とでは、噛合いの高さ(スプロケット中心からの半径)が異なります。これにより、駆動スプロケットが等速回転していても、チェーンの進行速度は半径比だけばらつきます。その速度変動率は、次式にて計算されます。

速度変動率=(V2-V1)/V2=1-cos(180°/Z) (Zは歯数)

歯数が増すほど回転が滑らかになり、スムーズな伝動が可能となるため、一般的に歯数は15枚以上を推奨しております。

<回転ムラ>

チェーンの速度変動とスプロケットの性質とにより、従動スプロケットに回転ムラが生じます。更に、スプロケットの偏心取付誤差やチェーン及びスプロケットの製作誤差による影響も加わります。駆動スプロケットの歯数を増やせば(直径の大きなもの)、円滑な伝動に近づき、回転ムラは小さくなります。

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Q16 ピンギヤ駆動とはどの様な方法か?
A16

物を直線運動や回転運動させるために、一般には駆動源(モータなど)より減速機を経て、ローラチェーンやギヤなどが使用されます。
ローラチェーンを使用した巻き掛け伝動ではスペースが大きく、ギヤでは精密加工を要し、コスト高になるなどの問題に直面します。このような時にピンギヤ駆動が最適です。
ピンギヤ駆動は、図1のようにピンギヤ用アタッチメント付チェーンをドラムやテーブルの外周に巻付けホイルとし、ピニオンギヤの代りに特殊歯形のスプロケット(ピンギヤスプロケット)を用います。
また、直線運動の時は、図2のようにラックの代りにピンギヤ用アタッチメント付チェーンを直線に取付け代用します。

項目 ピンギヤ駆動 巻掛け伝動 ギヤ伝動
軸間距離の制約 あり なし あり
噛合歯数 少ない 多い 少ない
速比範囲 無制限 1:7まで 無制限
歯形 特殊歯形 スプロケット歯形 インボリュート
噛合精度 普通 普通 精密

上表よりピンギヤ駆動は、
〇1:5以上の比較的大きい減速装置で
〇回転精度があまり必要でなく
〇低速で使用されるもの(チェーン速度 50m/min以下)
に最適です。

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Q17 ローラチェーン、ラムダチェーンの弾性伸び量は?
A17

〇RSローラチェーン 1列

標準的な目安として下表を参照ください。

〇ラムダチェーン 1列

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Q18 多連ロール(ローラコンベヤ)の駆動方式とその特長は?
A18

多連ロール(ローラコンベヤ)には、ワンモータ駆動やラインシャフト駆動がありますが、ここではチェーンを使用した一般的な3パターンの駆動方式を紹介します。
各々の特徴をご理解の上、用途に応じて使い分け下さい。


(1)平行掛式

〇方式
隣り合うロールにチェーンを巻き掛け、1つの軸から隣へ、さらに隣の軸へと連動する方法で、最も一般的な駆動方法です。

〇長所
・チェーンの取替えが容易
・摩耗伸びは、駆動側に近い方が大きくなるが、その部分だけでの取替えが可能。

〇短所
・摩耗伸びによるたるみの調整が出来ない。たるみが大きいと、チェーンがバタつき、作用張力の増大、スプロケットへの乗り上げの可能性がある。→ テンショナーが必要になる。
・チェーン毎に給油が必要。


(2)ラック式

〇方式
チェーンを一直線に走行させ、そのチェーンにスプロケットを噛合わせるもので、一種のラック方式です。軽荷重用に限定されますが、簡単な方式です。

〇長所
・カーブドチェーンで、コーナー部も使用可能
・屈曲箇所がなく、チェーンの摩耗は少ない。

〇短所
・高速・大荷重には不向き。
・ローラ割れが発生しやすい。
・原則的には、ピンギヤスプロケットが必要で高価になる。


(3)たすき掛式

〇方式
各ロール軸にスプロケットを2ケづつ取付け、1個は軸に固定し、もう1個はベアリング入りのアイドラー(空転)とし、チェーンは2本をたすきの様にかけます。各チェーンはロール軸を1本とびに駆動する方法です。

〇長所
・2本のチェーンで荷重分担するので、チェーンサイズが小さく出来コンパクト。
・チェーンのたるみ調整や給油が1箇所で出来る。
・正逆転の使用でも問題ない。

〇短所
・部分的なチェーン取替えが出来ない。
・取り付け間隔とスプロケット歯数によって巻き付け角が十分に得られない場合がある。
・設置幅が大きくなる。

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Q19 チェーンにはどの様な規格があるのか?
A19

チェーンはいろいろな用途に幅広く用いられる機械要素であり、性能と互換性を確保するために、国際規格と各国規格が制定されています。以下にその一部を紹介いたします。(2007年1月現在)

チェーンの種類 日本工業規格 国際規格 米国規格
伝動用ローラチェーン
アタッチメントも含む
JIS B 1801 ISO 606 ASME B 29.100
伝動用ブシュチェーン
アタッチメントも含む
JIS B 1801 ISO 606 ASME B 29.100
伝動用及び搬送用
ダブルピッチローラチェーン
JIS B 1803 ISO 1275 ASME B 29.100
リーフチェーン JIS B 1804 ISO 4347 ANSI B 29.8M
注)上表で対応位置にあるものが内容も同一であるとは限りません。
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Q20 チェーンはRoHS指令に対応しているか?
A20

椿本チエインの伝動用・搬送用チェーンはRoHS指令に全て対応しております。

RoHS指令(ローズ指令)とは
人や自然環境が有害物質によって悪影響を受けるのを防ぐため、特定有害物質を電気・電子機器に使うことを禁止する欧州(EU)の規制のことです。RoHSとは「Restriction of the use of certain Hazardous Substances in electrical and electronic equipment」の略で、日本語に訳すと「電気・電子機器における特定有害物質の使用規制」となります。

RoHS指令で使用禁止となっている有害物質と含有率基準値
1,000ppm(0.1wt%)以下
水銀 1,000ppm(0.1wt%)以下
カドミウム 100ppm(0.01wt%)以下
六価クロム 1,000ppm(0.1wt%)以下
ポリ臭化ビフェニル(PBB) 1,000ppm(0.1wt%)以下
ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE) 1,000ppm(0.1wt%)以下
フタル酸ジエチルへキシル(DEHP) 1,000ppm(0.1wt%)以下
フタル酸ジブチル(DBP) 1,000ppm(0.1wt%)以下
フタル酸ブチルベンジル(BBP) 1,000ppm(0.1wt%)以下
フタル酸ジイソブチル(DIBP) 1,000ppm(0.1wt%)以下
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Q21 オフセットリンク(OL)の種類と注文方法は?
A21

チェーンを奇数リンクで編成される場合にはオフセットリンク(半こま)が必要です。
オフセットリンクには、1リンクで構成される1ピッチオフセットリンク(OL)と、複数リンクで構成される2ピッチオフセットリンク(2POL)、4ピッチオフセットリンク(4POL)の3種類があります。


(1) オフセットリンク(OL)の種類

OL 2POL 4POL
ドライブ
チェーン
適用シリーズ
汎用・無給油・耐環境 汎用 スーパーチェーン
(1列のみ)
特長 RS40~RS240は本体チェーンに比べ伝動能力35%低下、(RS35は20%低下)、最大許容張力kN{kgf}は35%の低下を見込んでください。 伝動能力表通りご使用いただけます。 本体チェーンに比べ最大許容張力、伝動能力は10%の低下を見込んでください。

(2) 2POL、4POL手配時の注意点


全長9リンクで2POLをご使用になりたい場合の編成

●例:MCJLと2POLを使用 全長9Lの場合
本体X5L、MCJLX2個、2POLX1個
リンク数、端部リンクの指示:+9L-MCJMCJ2O


全長11リンクで4POLをご使用になりたい場合の編成

●例:FSJLと4POLを使用 全長11Lの場合
本体X5L、FSJLX2個、4POLX1個
リンク数、端部リンクの指示:+11L-FSJFSJ4O

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Q22 継手リンク(JL,OL,2POL)を組込む際に給油は必要か?
A22

本体に組込んで出荷を行なう場合を除き、継手リンクには通常軽防錆油のみを塗布し発送しています。これはお客様で切り継ぎされる際、本体と同等粘度の潤滑油を継手リンクに塗布すると作業性を低下させる恐れがあるためです。継手リンクを出荷された状態のままご使用いただいくと、早期に給油不足による 摩耗が発生する恐れがあります。 継手リンクを本体に組み込む際にはピン、ブシュに必ず潤滑油を塗布してから本体に組み入れてください。既にピン・ブシュが組み込み済みの2POLは下図を参考に給油してください。


※2POLの給油位置

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Q23 ローラチェーン(ドライブチェーン)は、過去に呼称名が変更されたことがあるか?
A23

1966年以降、大幅なローラチェーンのチェーンサイズを示す呼称名は変更していません。ただし、仕様、ラインナップの拡大により商品名の追加はありますので、各商品ページをご確認ください。

なお、現商品は当時の商品とは形状同一なものの、大幅に性能が向上しています。当時の設計資料や、取替えの際は当社へご相談ください。

ローラチェーン形番の変遷
ISOチェーン番号 ~1955年頃 1955年~1965年頃 1966年以降
04C RS25 RS25
06C RS35 RS35
085 RS39 RS41
08A RS40 RS40A RS40
10A RS48 RS48A RS50
12A RS56 RS56A RS60
16A RS66 RS66A RS80
20A RS87 RS87A RS100
24A RS96 RS96A RS120
32A RS106 RS106A RS140
36A RS116 RS116A RS160
40A RS125 RS125A RS200
48A RS240A RS240
1964年頃、A級(当時強力形チェーン)をつばき標準品とし、形番に"A"を付与。
その後、1966年より現形番に統一しました。
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Q24 F形継手リンクとM形継手リンクの違いは?
A24

継手プレートのピン穴とピンがすきまばめかしまりばめかの違いです。


M形継手リンク … すきまばめ

F形継手リンク … しまりばめ


・連結作業やメンテナンスでの着脱作業がスムーズにできるのは
M形継手リンクです。

・吊下げ、サイドフォースが作用するおそれがある場合の伝動は
F形継手リンクをご使用ください。

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Q25 チェーンテンショナ(椿本製)の使用上の注意は?
A25

(1)チェーンが脈動すると、反動でテンショナのロッドが出入りして、本体との間で摺動します。その為、ロッドおよび本体側で摩耗が促進されますので、この間に給油を実施ください。


(2) 粉塵や腐食性の激しい雰囲気では、テンショナの損傷が激しくなります。その様な雰囲気では、ご使用を避けてください。


(3) 垂直駆動のようにテンショナにスラスト方向の力が加わり、且つ正逆運転のように激しい荷重変動が加わる場合は、テンショナが著しく損傷する場合がありますので、ご使用を避けてください。

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Q26 チェーンテンショナの変位量と押し付け力の関係は?
A26

つばきチェーンテンショナの本体部には、2本のコイルばねを内蔵しており、このコイルばねの弾性を利用して、先端部に取付けたアイドラスプロケットまたはプラスチックシューがチェーンを押付け、たるみを調整する機構です。以下に、アイドラスプロケットまたはプラスチックシューの変位量とその時に作用する押付け力の関係式を示します。据付け、調整時の目安としてください。


◆TCS形(揺動式)


・作用する押付け力 F(kN)
・変位量(揺動角) δ(°)
・重力加速度 G=9.80665(m/s2)

〇CT-TCS40、CT-TCS50
F=(0.26×δ+0.8)×G×10-3
押付け力の範囲:0~0.15(kN)

〇CT-TCS60、CT-TCS80
F=(0.95×δ+1.5)×G×10-3
押付け力の範囲:0~0.39(kN)


◆ETS形及びTA形(直動式)


・作用する押付け力 F(kN)
・変位量(揺動角) δ(°)
・重力加速度 G=9.80665(m/s2)

〇CT-ETS40、CT-ETS50、CT-TA40
F=(0.8×δ+8.4)×G×10-3
押付け力の範囲:0.10~0.25(kN)

〇CT-ETS60、CT-ETS80、CT-TA50、CT-TA60
F=(1.36×δ+19.1)×G×10-3
押付け力の範囲:0.15~0.39(kN)

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Q27 ローラチェーン用自動給油器(SFM68)を上向きで使用できるか?
A27

ローラチェーン用給油器(SFM68)本体にオプションのブラシを使用される場合は、上向きに設置すると、油がブラシ先端まで届きません。水平より下向きになる方向で使用ください。ブラシを使わず、配管される場合は、給油器本体の向きは、下向き・上向き・横向きなどレイアウトは自由です。但し、配管の長さは0.5m未満、内径6mm以上とし、経路の分配は行わないでください。

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Q28 ローラチェーン用自動給油器(SFM68)に充填された食品機械用油とは?
A28

ローラチェーン用給油器(SFM68)に充填された潤滑油は、FDA(米国食品医薬品局)連邦規則21CFR178.3570※1に合格し、NSF(米国国立公衆衛生財団)によりH1※2認定を受け、安全性が確認された潤滑油です。お客様のPL対策やHACCP※3(ハセップ)システムにおいて「安全性の向上」に貢献します。


〇安全性
植物油系潤滑 > 流動パラフィン > 食品機械用潤滑剤(弊社 SFM68がこれに相当) > 合成油・特殊製品 ≧ 工業用潤滑剤

〇潤滑油の性能(潤滑性・極圧性・耐熱性・酸化安定性・防錆性他)
合成油・特殊製品 > 食品機械用潤滑剤(弊社 SFM68がこれに相当) ≧ 工業用潤滑剤 > 流動パラフィン > 植物油系潤滑油


※1偶発的に食品に接触する潤滑剤を「間接食品添加物」と位置づけており、厳しい安全性試験の結果、潤滑剤を構成してもよい物質及びその許容濃度を細かく規定している。

※2 FDAで認可された原材料を使用し、「偶発的に食品に接触する可能性のある潤滑箇所に使用できる」として認定された食品機械用潤滑剤のことです。H1以外にH2もあり、H2は「食品に接触する可能性はないが、食品工場で使用すること が望ましい潤滑剤」とされています。つまり、食品に触れる可能性がある場所での使用はできません。

※3 HACCPはHazard Analysis Critical Control Pointの略で、「危害分析重要管理点」と訳され、安全・衛生管理手法です。
<参考文献……エクソンモービル(有)食品機械用潤滑油カタログ・技術資料>

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Q29 ローラチェーン用自動給油器(SFM68)でON、OFF操作が頻繁に出来るか?
A29

ローラチェーン用給油器(SFM68)のスイッチであるガスジェネレータ(乾電池式ガス発生器)でON、OFFは可能です。
但し、油が吐出するまでにタイムラグがあり、最短でも1日以上かかるため頻繁なON、OFFには不向きです。長期間、機械を停止される場合などは、OFF(ダイヤルメモリ“0”)の状態にしてください。


[ガスジェネレータは、製造から3年の寿命です。長期間機械を停止される場合、これを越えない様にご注意ください。詳細は、カタログ、取扱説明書に記載しております。]

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Q30 チェーンの摩耗伸びを簡単に測定できないか?
A30

通常、チェーンの摩耗伸びの測定には、ノギスやコンベックスを利用し、どの程度伸びているかを点検いただきます。RSローラチェーン、BSローラチェーン、リーフチェーンに関しては、簡易的に寿命に達しているかどうかを判定する「チェーン摩耗測定スケール」を商品化しております。(伸び量は測定できません。)

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Q31 エンドボルトの特型は対応できるのか?
A31

吊下げ等で使用頂く為の端末金具「エンドボルト」は、カタログではRS40EB~RS120EBまでです。しかし、ご要望によりそれ以外のサイズも特型で対応いたします。弊社までご相談ください。

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Q32 チェーン分解用の簡単な治具はあるか?
A32

チェーンの分解は、グラインダ、バイス、パンチをご用意頂ければ、あとは一般的な工具で対応できます。当社では、より簡単で使い易いチェーン専用の分解工具も商品化しております。詳しくは、ドライブチェーンアクセサリの頁をご覧ください。

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Q33 エンドボルトへの荷重の方向は?
A33

水平(台車けん引、ピンギヤなど)あるいは垂直(吊り下げなど)で使用いただく際は、エンドボルトの軸芯上にローラチェーンの荷重が作用するようにしてください。エンドボルトの軸芯とローラチェーンの作用荷重方向が異なる使い方(曲げ荷重が作用するような使い方)や捩じりが作用するような使い方は、絶対にしないでください。その他、カタログに記載のご使用上の注意を参照ください。

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Q34 スプロケットの心出し方法は?
A34

スプロケットの取り付けの良否は、チェーンのスムーズな伝動・搬送に影響するだけでなく、チェーン・スプロケットの寿命も左右します。
弊社 カタログに記載の「スプロケットの取付け」を参照の上、軸の水平度、平行度、一対のスプロケットの食い違いを調整下さい。
レーザービームを使ってスプロケットの心出し調整が簡単に行える、「イージーレーザーEL-D90-BTAコンパクト」を商品化しております。

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