トラブルシューティング ローラチェーンの伝動の異常とその手当

ローラチェーンおよびスプロケットは、著しい損傷や破壊があった場合は、以下の手当てを行って新品に交換してください。

全般

1 ローラチェーンがスプロケットに乗り上げる
2 異常な騒音がする
3 ローラチェーンが振動する
4 ローラチェーンがスプロケットに巻込む(噛離れが悪い)
5 ローラチェーンの発錆
6 ローラチェーンのプレートの内側とスプロケット歯側面の摩耗
7 ローラチェーンのプレート側面やピン頭部の摩耗
8 ローラチェーンの屈曲が悪い
9 プレート内幅の広がり

プレート関係

10 プレートが破断する
11 プレートにクラックが発生(疲労) (引張方向に直角方向)
12 プレート穴の変形
13 応力腐食割れ(プレートに弓状のクラック)

ピン関係

14 ピンが破断する
15 ピンの回転または飛び出し
16 金具などに接続したときの継手ピンのみに摩耗や錆が発生する(吊下げなど)

ブシュ・ローラ関係

17 ローラ・ブシュが割れる(脱落)
18 ローラが回転しない
19 ローラが開口する
20 ローラがつづみ形になる
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全般

1
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ローラチェーンがスプロケットに乗り上げる
原因1 ローラチェーンとスプロケットが不適合 手当法 ローラチェーンまたはスプロケットを正しいサイズに取替える。
原因2 著しい過負荷 手当法 負荷を減少させる(被動機に給油なども)。またはローラチェーンサイズや列数を増やすか、サイズを大きくする。
原因3 ローラチェーンの摩耗伸びまたはスプロケットの歯の摩耗 手当法 新品に取替える。
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2 異常な騒音がする
原因1 スプロケットや軸の据付不良 手当法 点検・修正をする。
原因2 チェーンケーシングや軸受の緩み 手当法 全てのボルト・ナットを締めなおす。
原因3 ローラチェーンのたるみ量の過大・過小 手当法 最適のたるみになるように軸間距離を調整する。
原因4 ローラチェーンまたはスプロケットの著しい摩耗 手当法 一連のローラチェーン・スプロケットを新品に取替える。
原因5 無給油または給油不適当 手当法 使用条件に合った給油をする。
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3 ローラチェーンが振動する
原因1

ローラチェーンが外力の周期と共振


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手当法

ローラチェーンの振動モードを替える。

1.共振を防ぐ方法

a. ローラチェーンの固有振動数を変える。

○初期張力を与える、あるいは変更することによって有効張力を変更する。

○テンショナを付けてチェーンスパンを変更する。

○ローラチェーンを変更する。(質量・バネ定数の変更)

b. 起振振動数を変える。

○スプロケットの回転速度を変更する。

○装置の見直しをする。

2.機械的に振動を小さくする。

○振止め(ガイドストッパ)を付ける。

○たるみ側に自動調整式テンショナを付ける。


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原因2 負荷の変動が異常に大 手当法 流体継手などで変動を少なくする。
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4
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ローラチェーンがスプロケットに巻込む(噛離れが悪い)
原因1 軸間距離が長すぎる 手当法 中間にアイドラを入れる。
原因2 ローラチェーンのたるみ量が過大 手当法 チェーン長さまたは軸間距離を調整する。
テンショナを付ける。
原因3 ローラチェーンの摩耗伸び、またはスプロケットの摩耗 手当法 いずれも新品と交換する。
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5 ローラチェーンの発錆
原因1 不適当な給油、悪い雰囲気 手当法 ローラチェーンを取替えた後で、給油やケーシングによって雰囲気からローラチェーンを保護する。
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6 ローラチェーンのプレートの内側とスプロケット歯側面の摩耗
原因1

据付不良


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手当法 スプロケット、軸などの据付修正をする。
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7 ローラチェーンのプレート側面やピン頭部の摩耗
原因1

ガイドなどの据付不良


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手当法 ガイドの状態をチェックし、ガイドとローラチェーンの隙間を広くする。
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8
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ローラチェーンの屈曲が悪い
原因1 据付不良によるローラチェーンの変形 手当法 据付状態の点検・修正をする。
原因2 不適切な給油(例えばグリース)による摩耗粉、ゴミなどの固着 手当法 ローラチェーンを外し、洗浄・適切な給油をする。
原因3 著しい過負荷、ピンの曲り、ブシュ割れ 手当法 負荷を減少させる、またはローラチェーンサイズや列数を増やす。
原因4 腐食・錆 手当法 ケーシングを付けてローラチェーンを保護する。
原因5 不適切な給油による焼付き 手当法 使用条件に合った潤滑をする。
原因6

ピンとブシュの焼付き


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高速運転によって、ピンとブシュが焼付き、屈曲不良を起こし、切断事故を引起こすこともある。

手当法 使用条件を適切にする。
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9 プレート内幅の広がり
原因1

据付不良による偏荷重または著しい過負荷


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手当法 新品に取替えると共に据付の修正をする。
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プレート関係

10
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①静的破壊

プレート引っ張り、破断荷重以上の荷重をかけると、プレートは伸びた後で切断する。


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②疲労破断

疲れ限度を越える荷重がかかり、穴の内面から疲労し途中から急進的に破壊する。


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③オフセットプレートの疲労

オフセットプレートは中央で曲げ加工されているので、曲げ部の応力集中によって疲労破壊を起こすことがある。オフセットリンクは極力使用を避ける。

原因1 過大な衝撃荷重 手当法 起動・停止をスムーズにするなどによって衝撃荷重を小さくする。(緩衝装置を付けるなど)
ローラチェーンのサイズを大きくする、または列数を多くする。
原因2 ローラチェーンの振動 手当法 振動を防止する装置を付ける。(テンショナ、アイドラなど)
(ローラチェーンが振動する)の項を参照
原因3 被動機械の慣性大(過負荷) 手当法 ローラチェーンを改めて再選定する。(ローラチェーンのサイズを大きくする、または列数を多くする。)
原因4 腐食 手当法 新品に取替える。ケーシングを付けてローラチェーンを保護する。また定期的にローラチェーンを洗浄し給油する。
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11 プレートにクラックが発生(疲労) (引張方向に直角方向)
原因1 最大許容張力よりも大きな負荷が作用 手当法 過負荷・過大繰返し荷重を除く、またはローラチェーンのサイズを大きくするか、列数を多くする。
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12
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プレート穴の変形
原因1 過負荷 手当法 新品に取替える。過負荷の要因を除く。
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13
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応力腐食割れ(プレートに弓状のクラック)
原因1 酸・アルカリ性雰囲気での使用
(繰返し荷重の影響ではない。)
手当法 新品に取替える。ケーシングなどによって雰囲気からローラチェーンを保護する。
応力腐食割れに抵抗性の高い仕様の検討。(当社にご相談ください。)
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ピン関係

14
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①静的破壊

ローラチェーンを引張強さ試験したときの切れ方
使用中のローラチェーンでは、引張強さ以上の荷重が作用した時に起こる。


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②疲労破断

ピンの疲労限を越える大きな荷重を繰返し受けて、ピンが疲労破壊したもの。ピーク荷重の大きさを再チェックし対策を立てる。


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③ショックによる曲げ破壊

衝撃を受けてピンが曲げ破壊したもの。起点のある側に引張荷重を受け、起点の箇所から破壊が進んでいる。特にピンの表面が腐食していると曲げに対して弱くなり、このような現象が起こりやすい。

原因1 大きな衝撃荷重 手当法 衝撃を弱め、起動・停止をスムーズにする。
原因2 ピンの疲労限を越える繰返し荷重 手当法 過大繰返し荷重を除く、またはローラチェーンのサイズを大きくするか、列数を多くする。
原因3 腐食 手当法 ケーシングを付ける。定期的にローラチェーンを洗浄し給油する。
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15
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プレート穴の変形
原因1 過負荷または給油不足 手当法 新品に取替える。過負荷または給油の改善をする。
原因2 高負荷で給油不良の場合に、ピンとブシュに異常な摩擦力が発生し、瞬時にピンが廻ることがある。この状態で運転すると、ピン抜けによってローラチェーンが破壊する。 手当法 直ちに新品に取替える。このときピンを溶接したり、古いピンの再使用はしないでください。(古いローラチェーンは誤って再使用しないように破棄してください)また、ピン頭部やプレート側面が摩耗しているときは、据付状態を点検してください。
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16 金具などに接続したときの継手ピンのみに摩耗や錆が発生する(吊下げなど)
原因1 取付時の初期給油の不良 手当法 継手リンクを取替える。ピンの摩耗が著しいときはローラチェーンも取替える。
取付けるときは、特に吊下げ用などの端末金具の接続部に注意してください。
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ブシュ・ローラ関係

17
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疲労破壊

運転中に疲労が進み遂に破壊したもの。伝動能力以上の力でスプロケットの歯面にたたかれて起きる。

原因1 回転速度または負荷の過大 手当法 伝動能力表によって選定を再度行う。
原因2 不適切な給油 手当法 使用条件に適切な給油をする。新品に取替える。
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18 ローラが回転しない
原因1 RS11-SS-1、RS15-1、RS25-1、RS35-1 手当法 ブシュドチェーンでローラはありません。
原因2 内プレートが内側に寄っている、またはブシュ割れ 手当法 新品に取替える。据付の再点検、負荷のチェック
原因3 輸送物・異物がブシュとローラ間に入る。 手当法 定期的な排除。ケーシングを取付けてローラチェーンを保護する。
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19 ローラが開口する
原因1

過負荷


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手当法 負荷を減少させる。適切な給油をする。
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20 ローラがつづみ形になる
原因1 過負荷または、給油不足 手当法 新品に取替える。過負荷または給油の改善をする。
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