技術資料 クラッチ 選定

選定手順や注意事項等をご覧になりたい方は下記へお進みください。

製品シリーズの絞り込みや仮選定をご希望の方は
こちらをクリックしてください。

選定方法

カムクラッチの用途(オーバランニング・インデキシング・バックストップ)を明確にしてください。用途別に選定法が異なりますので、それぞれの手順に従ってカムクラッチを選定してください。なお、下記の形番の場合は、当社までご連絡ください。

  • (1)カムクラッチボックス
  • (2)ストッパ付き送り(インデキシング)に使用するクラッチ

1.オーバランニングの場合

  • (1)カムクラッチにかかるトルクを下の計算式から算出してください。

    トルク計算式

    SI単位 T = 60000 × kW 2π × N × S.f(N・m)

    {重量単位} T = 974 × kW N × S.f{kgf・m}

    T カムクラッチにかかるトルク(N・m)
    kW カムクラッチ軸の伝達動力(kW)
    N カムクラッチ軸の回転速度(r/min)
    S.f 使用係数(下表)

    使用係数表

    条件 S.f
    衝撃トルクなし 1~1.5
    やや衝撃トルクあり 1.5~2.5
    衝撃トルクあり 2~3
    強度の衝撃トルクあり 4~6
  • (2)最高空転回転速度
  • (3)軸穴径
  • (4)取付法
  • (5)その他(雰囲気条件、メンテナンスなど)

以上の条件を満足する形番をオーバランニング用クラッチ(上記用途別適合シリーズ一覧表および各掲載ページ参照)の中から選定してください。

……最も適する ○……適する
シリーズ
用途 MZ
MZ-G
BB PB 200 LD ML MG MI MX MI-S BS BR
BR(P)
MG-R MA MR カムクラッチ
ボックス
MZ-C MG-C
二元駆動

二速駆動
高速空転・高速かみ合い
高速空転・中低速かみ合い
高速空転・低速かみ合い
中低速空転・中低速かみ合い
正転かみ合い、逆転空転
フリーホイーリング
手動式

使用係数(S.f)が不明のときは、以下の手順で計算してください。

S.f = 原動機定格トルクの起動 % × 衝撃係数(最大2.5)

衝撃係数は、
慣性比 = 負荷側全慣性モーメント
(クラッチ軸換算)
入力側全慣性モーメント
(クラッチ軸換算)

と下図より求めてください。

衝撃係数

衝撃係数

2.インデキシングの場合

2.1 インデキシング送り用カムクラッチ

  • (1)カムクラッチにかかるトルクA式、またはB式で求めてください。
    注)クランク機構によらないインデキシングの場合には上式は適用できません。

    A式

    T = I・θ・N2 101750 + TB

    T カムクラッチにかかるトルク N・m
    I 負荷側の全慣性モーメント(カムクラッチ軸換算) kg・m2
    θ 1回の送り角度(度)(カムクラッチ軸換算)
    N 1分間当りインデキシング頻度(回/分)
    TB 負荷側のブレーキトルク N・m(カムクラッチ軸換算)

    B式

    T = 60000 × P 2π × n 2 1 × 2.5

    T カムクラッチにかかるトルク N・m
    P 伝達動力 kW
    n クランク軸の回転速度 r/min
    1 クランクの長さ m
    2 スイングアームの長さ m
    2.5 係数
  • (2)最高インデキシング頻度
  • (3)送り角度(θ) MI-Sシリーズ以外は90°以下
  • (4)N × θ ≦ 20000(高・中低速・送り角度小の場合)
    N × θ ≦ 50000(低速・送り角度大の場合)
  • (5)期待精度
    特に高精度の送りを期待する場合はMXシリーズをご使用ください。
    あわせて、逆転防止用クラッチやブレーキも高精度のものをご使用ください。
  • (6)軸穴径
  • (7)取付方法
  • (8)その他(寿命、メンテナンスなど)

以上の条件を満足する形番をインデキシング用カムクラッチ(下記用途別適合シリーズ一覧表および各掲載ページ参照)の中から選定してください。

……最も適する ○……適する
シリーズ
用途 MZ
MZ-G
BB PB 200 LD ML MG MI MX MI-S BS BR
BR(P)
MG-R MA MR カムクラッチ
ボックス
MZ-C MG-C
高速・送り角度:小
中低速・送り角度:小
低速・送り角度:大
間欠送りの逆転防止
ストッパ付送り 当社までご相談ください。
変速用

2.2 間欠送りのバックストップの場合

送り用カムクラッチと同一形番、または1ランク小さい形番を使用してください。

更に、MXシリーズを使用される場合は、下のグラフのそれぞれの曲線の下側の範囲になることを確認してください。

MXシリーズの使用範囲

MXシリーズの使用範囲

[クリックで拡大]

3.バックストップの場合の選定法

3.1カムクラッチにかかるトルク計算

(1)ベルトコンベヤの逆転防止の場合

[手順1] 無負荷動力(P1)の算出。 P1 = 0.06 × f × W × V × ℓ + ℓ0 367 (kW)

[手順2] 水平負荷動力(P2)の算出。 P2 = f × Qt × ℓ + ℓ0 367 (kW)

[手順3] 垂直負荷動力(P3)の算出。 P3 = h × Qt 367 (kW)

[手順4] 逆転動力(Pr)の算出。 Pr = P3 - 0.7(P1 + P2)(kW)

[手順5] 逆転トルク(T)の算出。 SI単位 T = 60000 × Pr 2π × N × S.f(N・m) {重量単位} T = 974 × Pr N × S.f{kgf・m}

  • f = ローラの回転摩擦係数
    = 0.03(通常の値)
  • W = 運搬物以外の運動部の質量 {kg/m}
    (ベルト幅により下表の値を使用)
    ベルト幅 mm 400 450 500 600 750 900 1050 1200 1400 1600 1800 2000
    質量 W 22.4 28 30 35.5 53 63 80 90 112 125 150 160
  • V = コンベヤ速度 m/min
  • Qt = 最大搬送量 t/h
  • h = 揚程 m
  • ℓ = 頭部と尾部ベルト車間の水平中心距離 m
  • 0 = 中心距離修正係数 m
    = 49m(通常の値)
  • N = BSカムクラッチ取付軸の回転速度 r/min
  • S.f = 使用係数
    (荷重のかかる頻度により下表の値を使用)
    1日数回程度以下 1.5
    1日数回程度以上 2.0

(2)バケットエレベータの逆転防止の場合

[手順1] 逆転トルク(T)の算出。 SI単位 T = (L + D) × Qt × D × 9800 120 × V
  × S.f(N・m)
{重量単位} T = (L + D) × Qt × D × 1000 120 × V
  × S.f{kg・m}

[手順2] 上記逆転トルク(T)が許容最大トルク以内にあるサイズを選んでください。

  • 注)1.逆転トルク計算に際して最大搬送量(Qt)はそのコンベヤの能力から考えられる最大の値を採用されることをお奨めします。コンベヤの不意の逆転は、しばしば、そのコンベヤが能力一杯の荷重になった時に起ります。
  • 注)2.上記以外のコンベヤの場合は、別途それぞれのコンベヤ固有の計算式により逆転トルクを算出してください。この場合も、そのコンベヤの能力一杯の荷重がかかることを想定して計算してください。
  • L = 揚程 m
  • D = 頭部コンベヤ鎖車のピッチ円直径 m
  • Qt = 最大搬送量 t/h
  • V = コンベヤ速度 m/min
  • S.f = 使用係数
    (荷重のかかる頻度により下表の値を使用)
    1日数回程度以下 1.5
    1日数回程度以上 2.0
  • T = 原動機トリップトルク
  • kW = モータ容量(kW)
  • N = カムクラッチの空転回転速度 r/min
  • S = モータの停動トルク %
  • Tmax = カタログ許容最大トルク

(3)原動機トリップによる選定

搬送時のトラブル、または結線ミスなどで駆動モータがトリップして停止する可能性がある時は、次式により選定してください。

SI単位 T = 60000 × kW 2π × N × S 100 ≦ Tmax(N・m)

{重量単位} T = 974 × kW N × S 100 ≦ Tmax{kgf・m}

注)上記選定式はBSシリーズ用ですので、他のシリーズの場合は、当社までご相談ください。

(4)反復衝撃荷重を伴なうバックストップの場合(テニスマシン・ピッチングマシンなど)

必要トルク計算

T = F × ℓ × 3.0

  • T:カムクラッチに掛かるトルク(N・m)
  • F:バネの最大引張力(N)
  • ℓ:偏心量(荷重)
  • 3.0:係数

3.2 空転回転速度

3.3 軸穴径

3.4 取付方法

テニスマシン・ピッチングマシンなど

逆転防止トルク一回転速度の早見表

(MG-Rのr/minは連続空転の場合です)

逆転防止トルク一回転速度の早見表

[クリックで拡大]

以上のそれぞれの項目を満足する形番をバックストップ用カムクラッチ(下記用途別適合シリーズ一覧表および各掲載ページ参照)の中から選定してください。

……最も適する ○……適する
シリーズ
用途 MZ
MZ-G
BB PB 200 LD ML MG MI MX MI-S BS BR
BR(P)
MG-R MA MR カムクラッチ
ボックス
MZ-C MG-C
低速空転
中速空転
高速空転
反復衝撃荷重をともなうバックストップ
×
(ドラッグで移動できます)

オーバランニングの用途別分類

用途 仕様
二元駆動

二速駆動
高速空転・高速かみ合い 空転回転速度=700r/min以上、かみ合い回転速度=700r/min以上
高速空転・中低速かみ合い 空転回転速度=700r/min以上、かみ合い回転速度=700r/min以下
高速空転・低速かみ合い 空転回転速度=700r/min以上、かみ合い回転速度=200r/min以下
中低速空転・中低速かみ合い 空転回転速度=700r/min以下、かみ合い回転速度=700r/min以下
正転かみ合い、逆転空転 入力を正逆回転して、かみ合いと空転を使いわける。回転速度=700r/min以下
フリーホイーリング 被動側の回転速度が相対的に駆動側より高速になると空転を始める。回転速度=700r/min以下
手動式 連続空転、手動かみ合い。
×
(ドラッグで移動できます)

インデキシングの用途別分類

用途 仕様
(1)高速・送り角度:小 頻度(回転速度)300回/分以上・送り角(θ)90°以下
(2)中低速・送り角度:小 頻度(回転速度)300回/分以下・送り角(θ)90°以下
(3)低速・送り角度:大 頻度(回転速度)150回/分以下・送り角(θ)90°以上
(4)間欠送りの逆転防止 送り用カムクラッチと同じ頻度、送り角
(5)ストッパ付送り (2)の使用法のうち材料を送り途中で強制的にとめてしまう使用法
(6)変速用 (2)の使用法のうち運転中に送り角(θ)を連続的に変えて変速する使用法
×
(ドラッグで移動できます)

バックストップの用途別分類

※形番によって、回転速度の幅があります。
用途 空転の様態 かみ合いの様態 主な用途
低速空転 ※150r/min以下の連続空転 不定期的な低頻度のかみ合い コンベヤ主軸の逆転防止用、ポンプなど
中速空転 ※150~700r/minの連続空転 コンベヤ駆動減速機の中間軸の逆転防止用、ポンプなど
高速空転 700~3000r/minの連続空転 コンベヤ駆動機の高速軸での逆転防止用、ポンプなど
反復衝撃荷重 間欠的な空転とかみ合いが高頻度に繰返される。 テニスマシン、バッティングマシンなど