技術資料 ドライブチェーン ローラチェーンの選定

6. 許容張力選定法

最大許容張力を使用して行う選定法です。

許容張力選定法

1. 速度の考慮

本選定法は、表1に示す速度内にてローラチェーンを使用する場合の選定法です。表中の上限速度以上で使用される場合は、一般選定法で選定を行なってください。

表1 選定上限速度
ピッチ
mm
上限速度
m/min
12.70未満 120
12.70 100
15.875 90
19.05 80
25.40 70
31.75 60
38.10 50
44.45 50
50.80 50
57.15 40
63.50 40
76.20 40
101.60 30
127.00 30

プラコンビチェーンの上限速度は70m/minとなります。

2. 衝撃の考慮

衝撃の大きな伝動、特に負荷の大きな伝動や横荷重が作用する恐れのある伝動など、過酷な条件の場合にはF形継手リンクや2ピッチ形オフセットリンクをご使用ください。

3. 継手リンクとオフセットリンクの強度

表2および表3に示すローラチェーンにM形継手リンクやオフセットリンクを使用するときは、最大許容張力に表中の割合を乗します。

表2 M形継手リンクの強度
RSローラチェーン RS15, RS25,
RS37, RS38,
RS41, BF25-H
80%
RSローラチェーン
BS/DIN規格
RF06B,
RS56B,
RS56B
80%
耐寒ローラチェーン
KT仕様
全サイズ 80%
表3 オフセットリンクの強度
オフセットリンク
1ピッチ 2ピッチ 4ピッチ
RSローラチェーン 65% 100% -
RSローラチェーン
BS/DIN規格
60% 60% -
スーパチェーン - - 85%
RSローラチェーン
NP仕様
65% - -
RSローラチェーン
NEP仕様・APP仕様
65% - -
低騒音チェーン 65% - -

4. スプロケットの考慮

強力ドライブチェーンを使用される場合、チェーン張力が大きくなります。そのため、市販の鋳鉄製スプロケットでは、リブやハブの強度が不足する場合があります。材質はS35C相当以上を採用ください。RSスプロケットは強力ドライブチェーンに対応した強度を備えています。強力ドライブチェーンには歯先に硬化処理を行ったものを採用ください。

チェーン選定に用いる計算式(こちら)、係数(こちら)、また慣性モーメントの求め方(こちら)もご参照ください。

許容張力選定法による選定例

許容張力選定法による選定例

条件

使用機械 コンベヤ駆動
搬送物質量M 6000kg
搬送物速度V 30m/min
コンベヤロール外径 380mm
ベルト厚さ 10mm
コンベヤロール回転トルク 3.3kN・m{337kgf・m}
モータ諸元
  • 11kW n1 = 1800r/min
  • 始動トルク Ts 200%
  • 最大(停動)トルク Tmax 210%
  • ブレーキトルク Tb 200%
  • 慣性モーメント Im 0.088kg・m2
  • {はずみ車効果 GD2m 0.352kgf・m2}
減速機減速比 1/50 (i = 50)
駆動軸 軸径 Φ66mm
従動軸 軸径 Φ94mm
軸間距離 500mm
従動スプロケット外径 ≦400mm
始動頻度 10回/日
衝撃の種類 多少の衝撃を伴う。
ソフトスタート・ストップ なし
SI単位

手順1 モータ特性の確認

・定格トルク
Tn = 9.55 ×   kW   n1 = 9.55 × 11 1800 = 0.058(kN・m)

・始動トルク
Ts = Tn × 2 = 0.058 × 2 = 0.116(kN・m)

・最大(停動)トルク
Tmax = Tn × 2.1 = 0.058 × 2.1 = 0.122(kN・m)

・ブレーキトルク
Tb = Tn × 2.0 = 0.058 × 2.0 = 0.116(kN・m)

・モータ慣性モーメント
Im = 0.088(kg・m2)

手順2 負荷から計算

従動軸回転数
n2 = V × 1000 (コンベヤロール外径 + 2 × ベルト厚さ) × π
= 30 × 1000 (380 + 20) × π = 23.9(r/min)

駆動軸回転数
n = n1/i = 1800 50 = 36(r/min)

チェーン減速比 = 23.9 36 = 1 1.51

従動スプロケットのPCD d2 = 400mmとすると
チェーン張力 Fw = コンベヤロール回転トルク × 1000 × 2 d2
= 3.3 × 1000 × 2 400 = 16.5(kN)

チェーンの仮選定を行います。

多少の衝撃を伴う.......使用係数 Ks = 1.3

仮補正チェーン張力 = Fw × Ks = 16.5 × 1.3 = 21.5(kN)

最大許容張力30.4kNのRS120-1を仮選定します。

従動スプロケット外径 < 400mmより31T
外径398mm PCD d2 = 376.60(mm)

駆動スプロケット歯数 = 31 1.51 = 21T PCD d = 255.63(mm)

チェーン速度 = P × Z'× n 1000 = 38.1 × 21 × 36 1000
= 28.8m/min < 50m/minですので許容張力選定が可能です。

小スプロケット回転速度 36r/min・回転係数 Kn = 1.03

小スプロケット歯数 21T....歯数係数 Kz = 1.10

チェーン張力 Fw = コンベヤロール回転トルク × 1000 × 2 d2
= 3.3 × 1000 × 2 376.6 = 17.5 (kN)

補正チェーン張力 F'w = Fw × Ks × Kn × Kz
= 17.5 × 1.3 × 1.03 × 1.10 = 25.8(kN)...(1)

RS120-1最大許容張力30.4kNの使用は可能です。

搬送物速度の確認(選定条件 30m/min)

V = n2 × (コンベヤロール外径 + 2 × ベルト厚さ) × π 1000
= n1 × 21 31 × (コンベヤロール外径 + 2 × ベルト厚さ) × π 1000
= 36 × 21 31 × (380 + 2 × 10) × π 1000
= 30.6(m/min)

手順3 加減速時間から計算

手順2の計算で小スプロケット(減速機出力軸スプロケット)はRS120の21Tとなったので、以下の計算も同一ピッチ、歯数で選定します。

加減速時間が既知ならば、その値を使用して計算します。ここでは未知の前提で計算します。

作用トルク Tm = Ts + Tmax 2 = 0.116 + 0.122 2 = 0.119(kN・m)

負荷トルク T = Fw × d 2 × 1000 × i = 17.5 × 255.63 2 × 1000 × 50
= 0.045(kN・m)

モータ軸換算  負荷側の慣性モーメント I
I = M × V 2 × π × n1 2
= 6000 × 30.6 2 × π × 1800 2
= 0.044(kg・m2)

モータの慣性モーメント Im = 0.088(kg・m2)

モータの加速時間
ts = (Im + I) × n1 9550 × (Tm - T)
= (0.088 + 0.044) × 1800 9550 ×(0.119 - 0.045)
= 0.34(s)

モータの減速時間
tb = (Im + I) × n1 9550 × (Tb + T) = (0.088 + 0.044) × 1800 9550 × (0.116 + 0.045) = 0.15(s)

tb < tsより、加速時のチェーン張力Fsより減速時のチェーン張力Fbの方が大きいので、以下これを採用します。

減速度
αb = V tb × 60 = 30.6 0.15 × 60
= 3.40(m/s2)

減速時のチェーン張力
Fb = M × αb 1000 × (コンベヤロール外径 + 2 × ベルト厚さ) d2
+ Fw = 6000 × 3.40 1000 × (380 + 2 × 10) 376.6 + 17.5 = 39.2(kN)

補正チェーン張力
F'b = Fb × Kn × Kz = 39.2 × 1.03 × 1.10 = 44.4(kN)...(2)
F'b = 44.4(kN)ですので、RS120-2(最大許容張力51.7kN)
又はRS120-SUP-2(最大許容張力66.7kN)が使用可能です。

同等のPCDを有するRS140 18T(外径279mm d1 = 255.98)と27T(外径407mm d2 = 382.88)で検討すると、条件の従動スプロケット外径≦400mmに抵触するので使用不可です。

チェーン減速比は必要な3623.9から2618となり、
搬送速度 = 30 × 3623.9 × 2618 = 31.3m/minになりますが
26T(外径393mm d2 = 368.77)で検討すると(2)F'b = 44.3(kN)になります。

RS140-1は最大許容張力40.2kNのため使用不可です。

RS140-SUP-1は最大許容張力53.9kNのため使用可能です。

スプロケット軸穴径18Tで最大89mm、26Tで最大103mmですので、
駆動軸:軸径Φ66mm、従動軸:軸径Φ94mmの使用は可能です。

軸間距離500mmですので、スプロケット歯数は18T(d1 = 255.98)と
26T(d2 = 368.77)が使用可能です。リンク数は46リンクとなります。

手順4 慣性比Rから計算

慣性比R = I Im = 0.044 0.088 = 0.5

伝動装置に遊びがあるので....衝撃係数 K = 1.0

始動トルク Ts = 0.116(kN・m)

始動トルクによるチェーン張力
Fms = Ts × i × 1000 × 2 d
= 0.116 × 50 × 1000 × 2 255.63 = 45.4(kN)

ブレーキトルク Tb = 0.116(kN・m)

ブレーキトルクによるチェーン張力
Fmb = Tb × i × 1.2 × 1000 × 2 d
= 0.116 × 50 × 1.2 × 1000 × 2 255.63 = 54.5(kN)

Fmb > Fmsより、大きい方のFmbを採用します。

補正チェーン張力
F'mb = Fmb × K × Kn × Kz
= 54.5 × 1.0 × 1.03 × 1.10 = 61.7(kN)...........(3)

(1)、(2)、(3)を比較すると(3)が一番大きい補正チェーン張力となります。

F'mb = 61.7(kN)ですので、RS120-3(最大許容張力76.0kN)、
またはRS120-SUP-2(最大許容張力66.7kN)が使用可能です。

軸間距離500mmですので、スプロケット歯数は21T(d1 = 255.63)と
31T(d2 = 376.60)が使用可能です。リンク数は54リンクとなります。

同等のPCDを有するRS160 15T(外径269mm d1 = 244.33)と
23T(外径400mm d2 = 373.07)で検討すると
(3)F'mb = 64.6(kN)が最大となります。

RS160-1は最大許容張力53.0kNのため使用不可です。

RS160-SUP-1は最大許容張力70.6kNのため使用可能です。

スプロケット軸穴径15Tで最大95mm、23Tで最大118mmですので、
駆動軸:軸径Φ66mm、従動軸:軸径Φ94mmの使用は可能です。

軸間距離500mmですので、スプロケット歯数は15T(d1 = 244.33)と
23T(d2 = 373.07)が使用可能です。リンク数は40リンクとなります。

{重力単位}

手順1 モータ特性の確認

・定格トルク
Tn = 974 × kW n1 = 974 ×   11   1800 = 5.95(kgf・m)

・始動トルク
Ts = Tn × 2 = 5.95 × 2 = 11.9(kgf・m)

・最大(停動)トルク
Tmax = Tn × 2.1 = 5.95 × 2.1 = 12.5(kgf・m)

・ブレーキトルク
Tb = Tn × 2.0 = 5.95 × 2.0 = 11.9(kgf・m)

・モータのGD2
GD2m = 0.352(kgf・m2)

手順2 負荷から計算

従動軸回転数
n2 = V × 1000 (コンベヤロール外径 + 2 × ベルト厚さ) × π
= 30 × 1000 (380 + 20) × π = 23.9(r/min)

駆動軸回転数
n = n1/i = 1800 50 = 36(r/min)

チェーン減速比 = 23.9 36 = 1 1.51

従動スプロケットのPCD d2 = 400mmとすると
チェーン張力 Fw = コンベヤロール回転トルク × 1000 × 2 d2
= 337 × 1000 × 2 400 = 1690(kgf)

チェーンの仮選定を行います。

多少の衝撃を伴う.......使用係数 Ks = 1.3

仮補正チェーン張力 = Fw × Ks = 1690 × 1.3 = 2200(kgf)

最大許容張力3100kgfのRS120-1を仮選定します。

従動スプロケット外径 < 400mmより31T
外径398mm PCD d2 = 376.60(mm)

駆動スプロケット歯数 = 31 1.51 = 21T PCD d = 255.63(mm)

チェーン速度 = P × Z'× n 1000 = 38.1 × 21 × 36 1000
= 28.8m/min < 50m/minですので許容張力選定が可能です。

小スプロケット回転速度 36r/min・回転係数 Kn = 1.03

小スプロケット歯数 21T....歯数係数 Kz = 1.10

チェーン張力 Fw = コンベヤロール回転トルク × 1000 × 2 d2
= 337 × 1000 × 2 376.6 = 1790 (kgf)

補正チェーン張力 F'w = Fw × Ks × Kn × Kz
= 1790 × 1.3 × 1.03 × 1.10 = 2640(kgf)...(1)

RS120-1最大許容張力3100kgfの使用は可能です。

搬送物速度の確認(選定条件 30m/min)

V = n2 × (コンベヤロール外径 + 2 × ベルト厚さ) × π 1000
= n1 × 21 31 × (コンベヤロール外径 + 2 × ベルト厚さ) × π 1000
= 36 × 21 31 × (380 + 2 × 10) × π 1000
= 30.6(m/min)

手順3 加減速時間から計算

手順2の計算で小スプロケット(減速機出力軸スプロケット)はRS120の21Tとなったので、以下の計算も同一ピッチ、歯数で選定します。

加減速時間が既知ならば、その値を使用して計算します。ここでは未知の前提で計算します。

作用トルク Tm = Ts + Tmax 2 = 11.9 + 12.5 2 = 12.2(kgf・m)

負荷トルク T = Fw × d 2 × 1000 × i = 1790 × 255.63 2 × 1000 × 50
= 4.58(kgf・m)

モータ軸換算  負荷側のGD2
GD2= M × V π × n1 2
= 6000 × 30.6 π × 1800 2
= 0.176(kgf・m2)

モータのGD2 GD2m = 0.352(kgf・m2)

モータの加速時間
ts = (GD2m + GD2) × n1 375×(Tm - T)
= (0.352 + 0.176) × 1800 375 × (12.2 - 4.58)
= 0.34(s)

モータの減速時間
tb = (GD2m + GD2) × n1 375 × (Tb + T) = (0.352 + 0.176) × 1800 375 × (11.9 + 4.58) = 0.15(s)

tb < tsより、加速時のチェーン張力Fsより減速時のチェーン張力Fbの方が大きいので、以下これを採用します。

減速度
αb = V tb × 60 = 30.6 0.15 × 60
= 3.40(m/s2)

減速時のチェーン張力
Fb = M × αb G × (コンベヤロール外径 + 2 × ベルト厚さ) d2
+ Fw = 6000 × 3.40 G × (380 + 2 × 10) 376.6 + 1790 = 4000(kgf)

補正チェーン張力
F'b = Fb × Kn × Kz = 4000 × 1.03 × 1.10 = 4530(kgf)...(2)
F'b = 4530(kgf)ですので、RS120-2(最大許容張力5270kgf)
又はRS120-SUP-2(最大許容張力6800kgf)が使用可能です。

同等のPCDを有するRS140 18T(外径279mm d1 = 255.98)と27T(外径407mm d2 = 382.88)で検討すると、条件の従動スプロケット外径≦400mmに抵触するので使用不可です。

チェーン減速比は必要な3623.9から2618となり、
搬送速度 = 30 × 3623.9 × 2618 = 31.3m/minになりますが
26T(外径393mm d2 = 368.77)で検討すると(2)F'b = 4520(kgf)になります。

RS140-1は最大許容張力4100kgfのため使用不可です。

RS140-SUP-1は最大許容張力5500kgfのため使用可能です。

スプロケット軸穴径18Tで最大89mm、26Tで最大103mmですので、
駆動軸:軸径Φ66mm、従動軸:軸径Φ94mmの使用は可能です。

軸間距離500mmですので、スプロケット歯数は18T(d1 = 255.98)と
26T(d2 = 368.77)が使用可能です。リンク数は46リンクとなります。

手順4 慣性比Rから計算

慣性比R = GD2 GD2m = 0.176 0.352 = 0.5

伝動装置に遊びがあるので....衝撃係数 K = 1.0

始動トルク Ts = 11.9(kgf・m)

始動トルクによるチェーン張力
Fms = Ts × i × 1000 × 2 d
= 11.9 × 50 × 1000 × 2 255.63 = 4660(kgf)

ブレーキトルク Tb = 11.9(kgf・m)

ブレーキトルクによるチェーン張力
Fmb = Tb × i × 1.2 × 1000 × 2 d
= 11.9 × 50 × 1.2 × 1000 × 2 255.63 = 5590(kgf)

Fmb > Fmsより、大きい方のFmbを採用します。

補正チェーン張力
F'mb = Fmb × K × Kn × Kz
= 5590 × 1.0 × 1.03 × 1.10 = 6330(kgf)...........(3)

(1)、(2)、(3)を比較すると(3)が一番大きい補正チェーン張力となります。

F'mb = 6330(kgf)ですので、RS120-3(最大許容張力7550kgf)、
またはRS120-SUP-2(最大許容張力6800kgf)が使用可能です。

軸間距離500mmですので、スプロケット歯数は21T(d1 = 255.63)と
31T(d2 = 376.60)が使用可能です。リンク数は54リンクとなります。

同等のPCDを有するRS160 15T(外径269mm d1 = 244.33)と
23T(外径400mm d2 = 373.07)で検討すると
(3)F'mb = 6620(kgf)が最大となります。

RS160-1は最大許容張力5400kgfのため使用不可です。

RS160-SUP-1は最大許容張力7200kgfのため使用可能です。

スプロケット軸穴径15Tで最大95mm、23Tで最大118mmですので、
駆動軸:軸径Φ66mm、従動軸:軸径Φ94mmの使用は可能です。

軸間距離500mmですので、スプロケット歯数は15T(d1 = 244.33)と
23T(d2 = 373.07)が使用可能です。リンク数は40リンクとなります。

選定結果

条件 手順 形番 スプロケット リンク数 潤滑形式
始動頻度6回未満 手順2 RS120-1 21T×31T 54リンク AII
始動頻度6回以上
クッションスタートあり。
手順3 RS120-2 21T×31T 54リンク AII
RS140-SUP-1 18T×26T 46リンク B
始動頻度6回以上
クッションスタートなし。
手順3
手順4
RS120-3 21T×31T 54リンク AII
RS120-SUP-2 B
RS160-SUP-1 15T×23T 40リンク B
  • 注)1.潤滑形式:各チェーンのサイズ、仕様の伝動能力表でご確認いただけます。
  • 2.全て軸間距離の調整は必要です。

チェーン選定に用いる計算式(こちら)、係数(こちら)、また慣性モーメントの求め方(こちら)もご参照ください。