技術資料 直動機器 リニスピードジャッキ 選定

必要条件

使用機械 ..... テーブルリフタ、圧入機etc

レイアウト.....

ジャッキ2台同期(モータ別駆動もしくは1台のモータでカップリング連結)など

運転サイクル .....右図タイムサイクルを参照
  • 最大荷重(W) .....負荷またはワークの重量 N
  • ネジ軸速度(V) .....ジャッキの必要速度 m/min
  • ストローク .....実際に使用するストローク mm

取付形状 .....フェイスマウント、フランジ固定など

据付状態 .....ベース固定、軸端クレビスなど

タイムサイクル

タイムサイクル

選定手順

1. 補正荷重Wsの算出

負荷の性質を考慮し、使用係数(表1)を参照の上、補正荷重Wsを求めます。

補正荷重 Ws (kN) = 最大荷重 W (kN)×使用係数 Sf

表1 使用係数 Sf

負荷の性質 使用例 使用係数
衝撃の無い円滑な作動
負荷慣性 小
バルブの開閉
コンベヤ切換装置
1.0~1.3
軽い衝撃のある作動
負荷慣性 中
各種移動装置
各種リフタ昇降
1.3~1.5
大きな衝撃、振動のある作動
負荷慣性 大
台車による物搬送、圧延ローラの位置決め保持 1.5~3.0

注)上記使用係数は一般的な目安であり、使用条件を考慮して決定ください。

2. ジャッキ1台当たりの荷重Wの算出

補正荷重Wsよりジャッキ1台当たりの荷重Wを求めます。連動運転の場合は連動係数(表2)を参照の上計算します。

ジャッキ1台当たりの荷重 W (kN) = 補正荷重 Ws (kN) ジャッキ使用台数×連動係数 fd

表2 連動係数 fd

連動台数(台) 2 3 4 5~8
連動係数 0.95 0.9 0.85 0.8

3. リニスピードジャッキの形番を仮選定

ジャッキ1台当たりの荷重Wを満足する許容推力を持つ形番を仮選定します。

ストロークは使用ストロークに余裕を見込んで選定します。取付形式、軸配置より形番を選定します。

注意事項

  • (1)使用荷重(静的・動的)・衝撃荷重とともにに許容推力を超えないように、安全を見込んだ十分な形番をお選びください。
  • (2)ジャッキのストローク以上で使用しますとジャッキが破損するおそれがあります。リニスピードジャッキは抜け止めを設けていますが、据付時の手動操作中にネジが抜け落ちないためのものです。
  • (3)いかなる場合も当て止めを行わないでください。当て止めを行いますとジャッキ内部に重大な損傷をおこします。
  • (4)フランジマウントの場合は、許容推力50%以下に制限が必要な荷重方向があります。詳細(こちら)をご参照ください。

4. 期待走行距離の確認

期待走行距離を満足するかを確認します。期待走行距離を長くする場合は枠番を上げて再計算します。

寿命計算の詳細(こちら)をご参照ください。

5. 座屈荷重の確認

圧縮荷重の掛かる場合は、許容座屈荷重以下になることを確認します。(こちら参照)

許容値を超える場合はジャッキのサイズを上げて再計算します。

6. 入力軸許容オーバハングロードの検討

入力軸にベルトなどを取付ける場合は、許容オーバハングロード以下になっているかを確認します。

許容値を超えている場合はジャッキの枠番を上げて再検討します。

7. 必要入力回転速度の確認

必要ネジ軸速度よりジャッキの必要入力回転速度を求めます。

N = V ×R

N:入力回転速度 r/min

V:ネジ軸速度 m/min

ℓ:ネジリード m

R:ウォーム速比

仕様の各項目は製品ページをご参照ください。

許容入力回転速度は3000r/minです。

この回転速度以下になることをご確認ください。

8. 負荷時間率の確認

1サイクルあたりの運転時間の割合を確認します。

負荷時間率%EDが許容値以内であるか確認します。

詳細はこちらをご参照ください。

×
(ドラッグで移動できます)

リニスピードジャッキは周囲温度を含んだ減速部表面温度90℃以下でご使用ください。

下表は減速部表面温度90℃以下となる負荷率(%ED)の目安を示します。 (保証値ではありません。)

実際のご使用に当たっては減速部表面温度をご確認ください。

入力回転速度

SJ015H

周囲温度 20℃
SJ015H 周囲温度 20℃

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周囲温度 30℃
SJ015H 周囲温度 30℃

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周囲温度 40℃
SJ015H 周囲温度 40℃

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SJ030H

周囲温度 20℃
SJ030H 周囲温度 20℃

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周囲温度 30℃
SJ030H 周囲温度 30℃

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周囲温度 40℃
SJ030H 周囲温度 40℃

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SJ050H

周囲温度 20℃
SJ050H 周囲温度 20℃

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周囲温度 30℃
SJ050H 周囲温度 30℃

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周囲温度 40℃
SJ050H 周囲温度 40℃

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%ED = 1サイクルの運転時間 1サイクルの運転時間 + 1サイクルの休止時間 ×100(%)

タイムサイクル表より負荷時間率%EDを求める式は下記の通りです。

%ED = t1 + t3 t1 + t2 + t3 + t4 ×100(%)

9. 必要入力トルクの確認

必要入力トルクを計算します。

サーボモータをご使用の場合は、サーボモータの許容トルクを満足する形番を選定ください。

T = W×ℓ π×R×η + To

T:必要入力トルク N・m

W:昇降荷重 N

ℓ:ネジリード m

π:円周率 3.14

R:ウォーム速比

η:ジャッキ総合効率または起動効率 注)

To:無負荷空転トルク N・m

※ネジリード、ウォーム速比、総合効率、無負荷空転トルクは各製品の主要諸元ページをご参照ください。ネジリードの単位にご注意ください。

例) 25mm ---> 0.025m

注)必ず起動効率にて起動時の必要入力トルクを確認願います。

10. 必要入力容量の確認

P = T×N 9550

T:必要入力トルク N・m

P:必要入力容量 kW

N:入力回転速度 r/min

11. 入力軸ねじりトルクの確認

同一線上に接続することができるジャッキの連動台数には、軸強度による制限がありますので、許容入力軸トルクをご参照ください。

例)ジャッキの配置が下図のようにストレート形の場合、駆動源のジャッキには2台分の必要入力トルクが入力軸に伝達されます。
この2台分のトルクが許容入力軸トルク以下であるか確認します。

※起動時のピークトルクが許容入力軸トルクを超えないようにご注意ください。

入力軸ねじりトルクの確認 30℃

ジャッキAのみの必要トルクTA

ジャッキBのみの必要トルクTB

駆動源必要トルクTt = TA + TB < 許容入力軸トルク

許容入力軸トルクは各製品の主要諸元ページをご参照ください。

12. オプションの決定

使用条件に合わせてオプションを選定します。

  • ・出力オプション
  • ・制御オプション

13. リニスピードジャッキ本体形番の決定

リニスピードジャッキ本体の正式形番を決定します。

選定例

必要条件

使用機械 ..... 4台連動押上げリフタ、工場内常温(30℃)、粉塵無し

レイアウト .....2台のジャッキを連結し、1台のブレーキ付サーボモータで駆動。これを2組で昇降する。(図1)

運転サイクル .....図2参照

  • ・最大荷重(W):28kN/4
  • ・ネジ軸速度(V):180mm/s(10.8m/min)
  • ・ストローク:540mm

取付形状 .....フランジマウント、フランジはケース側

据付状態 .....ベース固定-軸端固定(テーブル形先端金具取付)

期待寿命 .....30サイクル×2回/時間×8時間/日×250日/年×3年間使用

図1 レイアウト

レイアウト

2台のジャッキ(計4台)で昇降

図2 タイムサイクル

タイムサイクル
1サイクル当りの各時間
t1 3sec
t2 2sec
t3 3sec
t4 6sec
t 14sec
  • 1. 最大荷重より補正荷重Wsは(使用係数sf = 1.3とする。)

    Ws = 28×1.3 = 36.4kN

  • 2. ジャッキ1台当たりの荷重Wは(連動係数fd = 0.85とする。)

    W = 36.4 / 4 / 0.85 = 10.7kN

  • 3. ジャッキ1台当りの荷重より形式SJ015Hを仮選定します。

    使用ストローク540mmよりジャッキのストロークは余裕を見込み600mmとします。

  • 4. 使用頻度より期待走行距離を求めます。

    期待走行距離 = 0.54×2×30×2×8×250×10-3×3 = 388.8km

    ネジ軸の期待寿命はこちら参照の上、期待走行距離と荷重の交点よりジャッキの枠番を求めます。

    SJ015Hでは期待走行距離を満足できないので、形式はSJ030Hとなる。...OK

  • 5. 圧縮荷重がかかりますので、こちらの座屈計算式にて許容座屈荷重の検討を行います。安全率sf = 4とします。

    Pcr = 20×104(30.72/775)2 = 295.8kN

    sf = 295.8/10.7 > 4 ...OK

  • 6. 入力軸オーバハングロードの検討はブレーキ付サーボモータ直結駆動のため不要とします。

  • 7. 必要ネジ軸速度よりジャッキの必要入力回転速度を求めます。

    N = 10.8 / 0.025×6 = 2592 r/min

    ネジ軸速度、ネジリードの単位にご注意ください。
    (180mm/s --->10.8m/min、25mm --->0.025m)

  • 8. タイムサイクル表より負荷時間率を確認します。

    %ED = (3 + 3) / 14×100 = 43%ED

    許容負荷時間率はこちらより確認します。

    入力回転速度2592r/min、周囲温度30℃より、許容負荷時間率は50%EDとなります。

    50%ED > 43%ED ...OK

    ×
    (ドラッグで移動できます)

    リニスピードジャッキは周囲温度を含んだ減速部表面温度90℃以下でご使用ください。

    下表は減速部表面温度90℃以下となる負荷率(%ED)の目安を示します。 (保証値ではありません。)

    実際のご使用に当たっては減速部表面温度をご確認ください。

    入力回転速度

    SJ015H

    周囲温度 20℃
    SJ015H 周囲温度 20℃

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    周囲温度 30℃
    SJ015H 周囲温度 30℃

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    周囲温度 40℃
    SJ015H 周囲温度 40℃

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  • 9. ジャッキ1台当りの必要入力軸トルクを計算します。

    定常時の必要入力軸トルク

    T = 10.7×1000×0.025 / 2 / π / 6 / 0.87 + 6 = 14.2N・m

    ネジリード、速比、総合効率、無負荷空転トルクは各製品の主要各製品の主要諸元ページにてご確認ください。

    総合効率は入力回転速度毎の値をご使用ください。ネジリードの単位にご注意ください。(25mm --->0.025m)

    起動時の必要入力軸トルク

    T' = 10.7×1000×0.025 / 2 / π / 6 / 0.65 + 6 = 16.9N・m

    起動効率は各製品の主要諸元ページにてご確認ください。

  • 10. 1台のサーボモータで2台のジャッキを駆動するため、ブレーキ付サーボモータ1台当りの必要入力軸トルクを計算します。

    サーボモータに必要なトルクは

    Tm = 14.2×2 = 28.4N・m

    また、サーボモータに必要な起動トルクは

    T'm = 16.9×2 = 33.8N・m

    サーボモータの選定では、定格回転速度3000r/minで定格トルクが28.4N・mを満足するブレーキ付仕様をご検討ください。
    また、起動トルクが満足することもご確認ください。

    参考)サーボモータの必要容量

    P = 28.4×3000 / 9550 ≒ 9kW

  • 11. 2台のジャッキが同一線上に連結されているので、駆動側に近いジャッキの入力軸にはジャッキ2台分のトルクが掛かります。
    ジャッキの入力軸トルクがSJ030H記載の許容入力軸トルク以下であるか確認します。

    ジャッキ2台分のトルク = 16.9 + 16.9 < 65N・m ...OK

  • 12. ジャッキのオプションは

    軸端形状(先端金具) --->テーブル形先端金具付

    粉塵が少ない --->必要に応じジャバラ(特形品)を使用ください

  • 13. 以上の検討よりリニスピードジャッキ形番はSJ030H-TCT6Mが決定されます。