技術資料 タイミングベルト・タイミングプーリ 選定

トルクからの選定・選定例

選定に必要な項目

選定に必要な項目は次の通りです。それぞれの条件を定めてください。

  • ・原動機の出力トルク N・m、出力軸回転速度 r/min、軸の直径
  • ・被動機の種類、回転速度 r/min、軸の直径
  • ・軸間距離
  • ・1日の使用時間、起動頻度
  • ・速比
  • ・アイドラ使用の有無
  • ・その他の条件

設計トルクの決定

設計トルクは次の式により求めます。

Pt = Pm × (Ko + Ki + Ks) × Ka × Ke

※ウルトラPXベルトHA仕様(耐油/耐水仕様)を油や水が掛かる雰囲気で使用する際、PXベルト耐水仕様を水の掛かる雰囲気で使用する際は、使用雰囲気係数(Ke)として1.2を乗じてください。

ベルトサイズ・プーリ歯数の決定

  • (1)仮選定表を使って設計トルクと小プーリ回転速度よりベルトサイズを仮選定してください。
  • (2)各製品情報の基準伝動トルク表でベルト幅および小プーリ歯数を仮選定してください。この際以下のことに注意してください。
    • ・基準伝動トルクの着色部分以外の小プーリ歯数を選んでください。
    • ・小プーリのピッチ円直径>ベルト幅となるよう小プーリを選んでください。
    • ・小プーリの軸穴使用可能範囲が使用する軸の直径を満足する事を確認してください。
  • (3)小プーリ歯数と速比より大プーリの歯数を決定してください。また使用軸穴径の確認を行ってください。

ベルト長さと軸間距離の選定

  • (1)ベルトの概算長さ(L')を計算し、この値に最も近い長さのベルトをベルト長さ一覧より選んでください。

    L'= 2C + 1.57 (Dp + dp) + (Dp - dp)2 4C

    • L':ベルトの概算長さ mm
    • C:軸間距離 mm
    • Dp:大プーリ ピッチ円直径 mm
    • dp:小プーリ ピッチ円直径 mm
  • (2)選んだベルトの長さ(L)より、その時の軸間距離(C)を逆算します。

    C = B + B2 - 2(Dp - dp)2 4

    B = L - 1.57(Dp + dp)

    • L:ベルト長さ mm

かみ合い歯数による補正

プーリのかみ合い歯数が6歯未満は好ましい使い方ではないのですが、万一お使いになる場合は、かみ合い歯数による補正を行ってください。

かみ合い歯数を求めた上で、補正係数 表6によってかみ合い補正係数を決定してください。

またかみ合い角度は駆動プーリ120°以上、従動プーリ90°以上となるように設計してください。

Zm = N × Φ 360°

Φ = 180° - 57°(Dp - dp) C

  • Zm:小プーリのかみ合い歯数
  • N:小プーリ歯数
  • Φ:小プーリに対するベルトの巻付角度 度
  • Dp:大プーリ ピッチ円直径 mm
  • dp:小プーリ ピッチ円直径 mm
  • C:軸間距離 mm

ベルト幅の確認

設計トルクを満足するベルト幅を確認してください。

PtPr × Kw × Km × KL

Kw ≧ Pt Pr × Km × KL

選定計算例(トルクからの選定)

選定に必要な項目

選定に必要な項目は次の通りとします。

項目 内容
原動機出力軸トルク、回転数、軸の直径 定格トルク18.6N・m(100%)、1500r/min、32mm
被動機の種類、回転速度、軸の直径 間欠駆動コンベヤ、300r/min、30mm
軸間距離 250mm~350mm
1日の使用時間、起動頻度 8時間/日、5回/日
速比 1:1
アイドラ使用の有無
その他の条件 サーボモータ部減速機1/5、プーリ外径Φ100以下

設計トルクの決定

使用条件に合った各補正係数を求めて設計トルクを決定します。

  • 負荷補正係数 (Ko) ..... 1.5
  • アイドラ使用時の補正係数 (Ki) ..... 0
  • 増速時の補正係数 (Ks) ..... 0
  • 起動停止頻度補正係数 (Ka) ..... 1.2
  • 設計トルク Pt = Pm × (Ko + Ki + Ks) × Ka × Ke* = 18.6 × (1.5 + 0 + 0) × 1.2 = 33.48
    サーボモータ部減速機1/5より設計トルクは5×33.48=167.4N・mとなります。

ベルトサイズ・プーリ歯数の決定

  • (1)仮選定表よりベルトサイズを仮選定します。この場合、設計トルク(167.4N・m)、駆動プーリ回転速度(300r/min=1500/5)よりUP8M-HCを仮選定します。
  • (2)速比、原動機、被動機の軸の直径、その他の条件を考慮しながら基準伝動トルク表でベルト幅とプーリ歯数を選びます。
    ここではUP8M-HC(ベルト幅40mm)、プーリ歯数36歯(dp=91.67mm フランジ外径Φ97mm)を選びます。各プーリの寸法を参照してください。

ベルト長さと軸間距離の決定

  • (1)ベルトの概算長さ(L')を計算します。

    L' = 2C + 1.57(Dp + dp) + (dp - dp )2 4C = 2 × 300 + 1.57(91.67 + 91.67) + (91.67 + 91.67)2 4 × 300 = 887.84mm

    この概算長さに最も近いベルトは品種・寸法一覧より880UP8M(110歯)となります。

  • (2)このときの軸間距離(C)を計算します。

    B = L - 1.57(Dp + dp) = 880 - 1.57(91.67 + 91.67) = 592.15

    C = B + B2 - 2(Dp - dp)2 4 = 592.15 + 592.152 - 2(91.67 - 91.67)2 4 = 296.07mm

かみ合い歯数による補正

小プーリにかみ合うベルトの歯数を求め、かみ合い補正係数を決定します。

Φ = 180° - 57°(Dp - dp) C = 180° - 57°(91.67 - 91.67) 296.07 = 180°

Zm = N × Φ 360° = 36 × 180 360° = 18歯

よってかみ合い補正係数の表からKm=1.0となります。

ベルト幅の決定

設計トルクを満足するベルト幅を最終的に決定します。

Kw ≧ Pt Pr × Km × KL = 167.4 68.5 × 1.0 × 0.9 = 2.72

よって幅係数を満足するベルトはUP8M40-HC(ベルト幅40mm)となります。

選定結果

  • ベルト:BG880UP8M40-HC
  • 小プーリ:PT36P8M40AFまたはBF
  • 大プーリ:PT36P8M40AFまたはBF
  • 軸間距離:296.07mm

プーリの形番を決定後、プーリの締結方法を選択いただけます。

ベルト選定に用いる計算式もご参照ください。