技術資料 チェーンの取扱
8. 特殊雰囲気での使用上の注意
チェーンは清浄な空気中で使用することが原則となっていますが、これ以外の特殊な雰囲気でご使用になる場合は、次の諸項目をご参考ください。
8.1 湿潤状態の場合
チェーンに水がかかるときや、加熱蒸気の中を通るなどの場合は次の不具合が生じます。
- 1. 潤滑不良あるいは潤滑不能による摩耗伸びの増加
- 2. チェーンに発生する錆や腐食(孔食)による疲れ強さの低下
対策
- ・軸受圧力を低くして耐摩耗性を向上させるために、大きいチェーンサイズの採用
- ・防錆に対しては、耐環境チェーンの採用
8.2 酸・アルカリなどの化学作用を伴う場合
チェーンがバッテリ液やめっき処理液などの、酸やアルカリ雰囲気にさらされた場合は次の不具合が生じます。
- 1. プレートやピンの脆性破壊
- 2. 錆、孔食の発生によるプレートやピンの疲れ破壊
- 3. 通常の機械摩耗と腐食による摩耗
- 4. 腐食によるチェーン全体の体積の減少
- 5. 特殊なケースとして水中(液中)での電気化学的腐食
- 6. ステンレス仕様のものでも条件により腐食する場合があります。
図34はめっき装置に採用し、酸の影響により1ヵ月でチェーンが使用不可になった例です。
脆性破壊(応力腐食割れ)対策
- ・割れ感受性を下げた脆性対策仕様の採用
- ・チェーンに酸、アルカリなどの化学薬品が付かないようにカバーやケーシングの取付け
- ・耐食性に優れた材質の採用
腐食対策
- ・コーティングチェーンの採用
- ・チェーンに酸、アルカリなどが付かないようにカバーやケーシングの取付け
- ・耐食性に優れた材質の採用
なお、一般に脆性破壊(応力腐食割れ)は、プレート穴部から発生します。
これはピン、ブシュが圧入されている所の応力が高いためであり、チェーンに張力が作用していない場合でも割れは発生します。
また、チェーンは一般的にアルカリより酸に侵されやすく、特殊なケースとして海水、坑内水などによっても
脆性破壊(応力腐食割れ)を起こす事があります。

図34. ステンレスチェーンの腐食

図35. 水素脆性破壊
8.3 摩耗を促進する雰囲気の場合
砂、コークス、金属粉など摩耗を促進する物質が、チェーンにかかる場合には次の不具合が生じます。
- 1. ピン~ブシュ間に入り込んだ場合は、ピン、ブシュの摩耗の促進および屈曲不良の発生
- 2. ブシュ~ローラ間に入り込んだ場合は、ブシュ、ローラの摩耗の促進、およびローラ回転不良の発生
- 3. リンク~リンク間に入り込んだ場合は屈曲不良の発生
腐食対策
- ・防塵ケースの採用
- ・定期的なチェーンの洗浄による異物除去
- ・軸受圧力を低くして耐摩耗性を向上させるために大きなチェーンサイズを採用
- ・摩耗する部分に特殊加工を施したチェーンの採用